観客:チャンプ! チャンプ! チャンプ! チャンプ!
アナウンサー:もう待ちきれないといった様子の観客達が一斉にチャンプコールを始めています!
アナウンサー:そうです! 次のバトルで登場するのは誰もが知っているあの伝説のコードマン!
アナウンサー:セネト・ロールダイス!!
メディーラ:彼が表舞台から降りてもう大分経つのに
メディーラ:未だにこれだけ支持されているなんて 流石はチャンプね
シャーロット:……ああ、そうだね
※試合風景
アイリエッタ:――私のターンです
アイリエッタ:ミニオンによるアタックでフォースを攻撃!
セネト:ぐぅぅ……!?
アイリエッタ:フォースは破壊しました そのままアタックを……
※観客席
シャーロット:ねえ、メディーラ この急な復帰は本当にチャンプ自身の意思なのかな
メディーラ:一応表向きはファンや運営から何度もラブコールを送られて根負けして出場した……ってことになっているけど
メディーラ:どうしてそう思うの?
シャーロット:わからない でも何か違和感があるんだ
プレイヤー:もしかして勘?
シャーロット:これがキミの言う 勘かどうかはわからない でも……何か変なんだ
メディーラ:……あら? 何だかステージの様子がおかしいわね
シャーロット:?
※試合風景
セネト:う、嘘だろう……? 俺のライフはまだ…… 次の俺のターンまでは 持つはずで……
アイリエッタ:…………
セネト:嘘だ…………嘘だろ?
アイリエッタ:――アタックを再開します
セネト:ま、待てっ! 待ってくれ!
アイリエッタ:敵プレイヤーのライフに
セネト:待てええええええぇぇぇ!!!
アイリエッタ:なっ……
セネト:やめろ! やめるんだ! 手を降ろせ! アタックするんじゃない!
アイリエッタ:セネトさん…… いくらなんでも、それは……
セネト:終わりなんだろ!?俺にはわからないが次のアタックで終わりなんだろ!?その方法があるんだろ!?
セネト:ならやめろ!やめてくれ!頼む!なんでもするから!
セネト:俺の勝ちとは言わない……! ド、ドローだ! ドローにしてくれっっ!
アイリエッタ:…………
セネト:俺は棄権するっっ! だからアタックするんじゃないっっ!
セネト:おい、ビホルダー!マックスか?ブラッドか?誰か見てるんだろう!?棄権するからこのバトルは取りやめにしてくれ!
セネト:ドローだっっ!! ドローでいいだろうが!!!
セネト:大体俺は……戻ってきたくて……戻ってきたわけじゃねぇ……
セネト:バトルなんて……二度としたくなかったんだ…… 俺はもう……! ザ・ゼノンなんぞ……!
アイリエッタ:セネトさん、とても残念です ――ターンを再開します
セネト:!?!?!?
アイリエッタ:もう、終わりにしましょう
セネト:ま、待て! 待てっ! 待ってくれっっ!!!
アイリエッタ:敵プレイヤーのライフに――
セネト:違うんだッ! 俺はッッ!
アイリエッタ:――アタックを
セネト:俺はッッ『エレメント』が足りないんだ!!!
アイリエッタ:!?
セネト:ぐううううぅぅぅ ……っ!?!?
アイリエッタ:セネトさん……今……
機械音声:セネト・ロールダイスのライフがゼロになりました
機械音声:――勝者はアイリエッタ・ラッシュです
セネト:嫌……だ……そんな……
※観客席
シャーロット:なっ……!?
メディーラ:エレメントが足りないですって……!?
シャーロット:……ねえメディーラ エレメントがなくなるとコードマンはどうなるの?
メディーラ:わからないわ でも……チャンプの言うことが本当なら ただでは済まないかもしれないわね
※試合風景
機械音声:敗者から勝者へエレメントの移行が行われます
セネト:やだああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!
※エレメント移行完了
セネト:……………………
アイリエッタ:――――セネト、さん?
セネト:……………………
アイリエッタ:どうしました? 何故、何も言わな……
セネト:――――ボ
アイリエッタ:?
セネト:ボードゲーム ハ トッテモ タノシイヨ
アイリエッタ:……!?
セネト:サァ ボクニ チョウセン シテミテヨ!
セネト:ボクハ ツヨイゾ ゼッタイ マケナイカラネ!
アイリエッタ:セネトさん!?
※GS運営
マックス:馬鹿野郎!!! 早く回線を切れ!!! 何をしているんだ!?
ビホルダー職員:そ、それが、外部から操作されているようで 先程から全く動かず……!
マックス:ふざけるなっっ!!! アレを、ヤツのあの姿を晒していいと思ってるのか!?
※観客席
シャーロット:何だ今のは……
シャーロット:チャンプが壊れた……?
メディーラ:まさか エレメントを失ったことで チャンプのコードマンとしての機能が失われた……?
シャーロット:…………
プレイヤー:大丈夫……?
シャーロット:ああ、問題ないよ……それより(プレイヤー)クン!
シャーロット:すごい……すごいよ!
プレイヤー:!?
シャーロット:コードマンってエレメントを失うとこんな風になっちゃうんだ
シャーロット:ボク、コードマンが死ぬところなんて初めて見たよ~
シャーロット:そっか……コードマンってこうすると死ぬんだ……
プレイヤー:シャーロット……?
シャーロット:ボクたちコードマンは素体が損傷したとしてもデータさえ残っていれば生き続けることができる
シャーロット:言わば永遠の存在だ
シャーロット:エレメントを喪失してコードマンではなくなったチャンプ
シャーロット:それってコードマンとしては死んじゃったってことだよね?
※GS運営
マックス:会場の電源を根元から切れ!! 言い訳なんぞ後でどうとでもできる!!
マックス:まずはあの『ゼロエレメントの素体』を回収するんだ!! 破壊したって構わん!!!
ビホルダー職員:は、はいっ!
マックス:奴のコンコードもそこらに転がっている筈だ!! そちらの回収も忘れるな!!
※観客席
シャーロット:ずっと考えてたんだ ボクたちコードマンの存在について
シャーロット:コードマンはただのAIでも人間でもない『人ならざるモノ』だ
シャーロット:人間というよりも……そう 絵本に出てくる魔女に近いんじゃないかな
シャーロット:しかも今回チャンプをこんな風にしたのは恐らく誰かの意図だ
メディーラ:意図……って、誰の?
シャーロット:それはまだわからないよ でも、最初から違和感はあった
シャーロット:大体 参加条件の厳しい『GS』に
シャーロット:長期間『ザ・ゼノン』を休止していたチャンプが突然参戦するなんておかしい話だろ?
シャーロット:それに参戦にあたっての運営側の持ち上げ方も異常だ タレント的な立場としてのチャンプなら人気もわかる
シャーロット:でもプレイヤーとしてのチャンプを知っているファンが今どれだけいる?
シャーロット:全てが強引なんだよ
プレイヤー:それは……
シャーロット:……チャンプの死は 恐らくボクたちコードマンに対する見せしめだ
シャーロット:誰かがわざと大勢の目に入る場所を選んでチャンプを火あぶりにした
シャーロット:まるであの絵本みたいにね
メディーラ:…………
シャーロット:これは久々の難事件だ なんだかわくわくしてきたな
シャーロット:ふふっ こんな気持ちは久々だよ~!
前 2章5話 次 3章「タロット・ラビリンス」