リャン

 漸くだ……、漸く

 漸くあのAIを……社長の座から引きずり下ろせる……!


フィオーレ

 ヒュー様……っ

 ねえ、(プレイヤー名)まだ連絡取れないの?


 ――プルルルル……

 ――プルルルル……


【応答しない……】

ミーナ

 こちらもダメです

 ヒュートラムさん 位置情報をシャットアウトしているようです……


司会者

 ――では、決を採ります


ミーナ

 !


フィオーレ

 いやあぁぁ……っ!


司会者

 H&L社CEO ヒュートラム・オブリカーン氏の解任に賛成の方――

 ご起立を……!


リャン 

 ククッ……!


――バアァァンっ!


リャン

 !?


???

 ――その前に……


ヒュートラム

 ――少し時間を頂いても良いかね……?


《 会場に入る負傷したヒュートラムの画像が表示 》


リャン

 なッ!?


フィオーレ

 ひゅッ……


【ヒュートラム!】

ミーナ

 ヒュートラムさん その肩……!


ヒュートラム

 問題ない


ミーナ

 そんな筈は……!


【A:待ってたよ】

ヒュートラム

 (プレイヤー名)……

 フン…随分待たせてしまったようだな……

 ……悪かった

【B:手当しなきゃ!】

 そんな顔をするな…

 言ったろう、問題ないと

ヒュートラム

 さて……よくも嵌めてくれたな?

 ――リャンよ


リャン

 ッ!

 な……何の事でしょうか 社長


ヒュートラム

 決算報告の偽造 すべてお前が仕組んだ事

 そうだろう?


リャン

 何を仰っているのか――


???

 ――証拠ならここに


リャン

 ッッ!?!?

 お前、どうしてここに……!


フィンセラ

 煩い万年ナンバー2は無視して 僭越ながら――

 ぽちっとな


レコーダーの音声

 『――バッチ―ン!』

 『っああぁぁぁぁん!もっとぶって下さいませ フィンセラ様!』


【A:なにこれ】

ミーナ

 これ……リャン常務取締役の声ですか?

【B:もっとよく聞かせて!?】

レコーダーの音声

 『全く…大企業のナンバー2ともあろう方が こんな情けない声を上げて

 部下の方々が哀れでなりません……』

リャン

 っっっっ!


社員A

 リャ、リャンさん…?


社員B

 これは一体……


フィンセラ

 あ、失礼 間違えました

 証拠はこちらでした


レコーダーの音声

 『――ピリリリ……、ピ』

 『……ああ、君か うむ、よくやってくれた』

 『君のデータ改ざんのお陰で思うように事が運んでいる

 ――奴の解任ももうじきだ』

 『報酬……?

 ふっ……私が社長になったらいくらでもやるよ』


フィンセラ

 ――以上です

 いくら自宅とはいえ 秘密を口に出すというのは考えものですね

 だって……古のドラマみたいに 家政婦が見ているかもしれませんし


――ざわざわ……!


株主A

 どういう事だ?


株主B

 本物なのか?


リャン

 そ、そうだ!

 そんな音声データ いくらでも捏造できる!


フィンセラ

 音声データだけではございません


リャン

 っ!


フィンセラ

 今回の騒動に関する指示書 メール送受信履歴、メモ 秘密の日記帳等々……

 リャン様の私邸から持ち出した証拠がここに揃っております

 名付けて、そのまま検察に提出できるセットです


リャン

 グッ……お前、流しのメイドとか言っていたが

 ヒュートラムに雇われて……!


フィンセラ

 くすっ

 貴方からも この成金コードマンからも金が貰えて、懐が潤いました

 感謝致します


ヒュートラム

 しかしお前にしては仕事が遅すぎる

 もう少し早く証拠を揃えてくれると思っていたんだが?


フィンセラ

 ああそれは……

 ここまで来るのが酷く面倒だったので


ミーナ

 ええっ!

 ヒュートラムさんの一大事なのに、ですか?


フィンセラ

 では私はこれで

 証拠セットはこちらに置いていきますね

 それではまた御機嫌よう――……


ヒュートラム

 ………………リャンよ


リャン

 っ!


ヒュートラム

 あの運転手はもうすでに捕まった

 あいつが全て吐けば どの道お前は終わりだ

 さあ……決を採ろうじゃないか?

 このヒュートラム・オブリカーンが H&L社CEOである事に異議のあるものは

 ――――――立てッッ!!


――しぃぃん……


ヒュートラム

 では……

 続投、という事でよろしいか?


【拍手する】

――パチパチパチ……

会場の株主達

 ――パチパチパチパチ……!


ミーナ

 (プレイヤー名)さん

 ヒュートラムさん……!


フィオーレ

 よがっだぁ……!

 ぼんどによがっだぁ……!!


ヒュートラム

 何故泣く……


フィオーレ

 だっで嬉じぐでぇ……


ヒュートラム

 尚更何故泣く……

 全く……人間という奴は理解でき――


――どさっ……


ミーナ&フィオーレ

 !!


【ヒュートラム……!?】



アイリエッタ

 ――ヒュートラムさんの肩の中にあった弾丸は 取り除きました

 肩以外の部位に損傷はなく またAIのデータにも影響はありませんでした

 安心してください(プレイヤー名)さん

 ヒュートラムさんは無事です


【A:よかった……】

ミーナ

 そうですね……!

【B:ホントに……?】

ミーナ

 (プレイヤー名)さん

 アイリエッタさんは医療に特化したコードマンです

 人間はもちろん コードマンの治療もできるスペシャリストなのです

 ですから安心してください

フィオーレ

 ヒュー様を助けてくれてありがとう……!


アイリエッタ

 いえ これが私の使命ですので


ミーナ

 でも、その……『GS』当日まで……

 アイリエッタさんも出場なさるんですよね……?


アイリエッタ

 バトル開始は午後です

 これから向かっても十分時間はあります


【ありがとう……!】

アイリエッタ

 ……(プレイヤー名)さん

 ヒュートラムさんが目を覚ました時にでも 伝えておいてくれませんか?

 ――今後、このような無茶は止めて下さい、と

 ヒュートラムさんの気絶は 痛覚機能の伝達容量が大きかった為に

 素体が強制的にシャットダウンした事が原因です

 回路がショートする前に 防衛機能が働いたのです

 ですが……また同じような痛みに直面した時

 回路が焼き切れる心配がないとは言えません

 痛覚機能をつけているのなら 自己防衛しなければなりません

 それを自覚してください――と


【分かった】

アイリエッタ

 もうヒュートラムさんの身体に機能上の問題はありませんが

 今もまだ痛みは残っている筈です

 どうか、お側にいてあげて下さい

 では、私はこれで――



ヒュートラム

 ………………

 ………………ここは

 ………………




≪ 前話:2章3話 |  次話:2章5話 ≫




基本情報はこちら
ヒュートラム・オブリカーン

▶ ストーリー(ヒュートラム) ※本編ネタバレ注意

1章 Sii bella
1話 2話 3話
4話 5話 5.5話
2章 Emozione
1話 2話 3話
4話 5話 5.5話
3章 Viaggio
1話 2話 3話
4話 5話 5.5話
4章 Cuore
1話 2話 3話
4話 5話 5.5話


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  • 最終更新: 2020/08/27